鉄道趣味雑記帳

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鉄道模型のはじめかた ~アメロコメンテナンス編~

 あろうことか、アメリカ型機関車から入る海外型の世界はいいぞおすすめだぞと叫びまくっておきながら、肝心のメンテナンスについて一切触れていなかったことに気がついてしまいました。

 なので(比較的簡便で)確実な車輪の清掃作業ができる方法の一例を紹介していきたいと思います。注意点としてこれはあくまで方法の一例であり、筆者はこれが最適だと考えてはいますが「絶対にこうしなければいけないやり方ではないという部分に気をつけてください。車輪がキッチリきれいになって自分の手に馴染むやり方があるなら、それで必要を満たせるわけで。

では御託はこれぐらいにして本題へ入っていきましょう。

 

アメロコメンテナンス編です。

 

もくじ

 

 

・(KATO製)アメロコの基本構造について

 

以前の記事でおすすめしたKATO製アメリカ型を購入した前提で話を進めていきますが、DCCとの兼ね合いで基本的にアメリカ型鉄道模型ディーゼル機関車の構造はメーカーが変わっても似たりよったりになるようです。

 動力ユニットと車体を分離した状態が下の画像です。

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KATO製 ES44AC

真横から見た状態なので細かい部分は分かりにくいかと思いますが、基本的に車種に関わりなく同じような内部構造となります。

 手に取ったときの重量感からも予想できたとおり中にはダイキャストフレームがみっちり詰まっているわけです。動力ユニットはこの左右別のフレームに、モーターと絶縁体を挟んでネジで組み上げた構造となっています。絶縁体を挟んでいるため左右のフレームは電気的に独立しており、ウエイトと集電板を兼ねるように設計されているというわけです。このあたりは日本型の電気機関車と似たような形ですね。

 そしてフレームに上からライト基板を被せ、画像でも大きく目立っている給電用の金属板からモーターに電気を供給するというのが動力ユニットの基本構造です。

モーターへの電気は必ずライト基板を通って供給されるようになっているので、ここをDCCデコーダーと交換してあげると特別な改造の必要なくDCCに対応できるというのがこの構造を採る理由なのでしょう。

 

 

・分解する際のコツ

 

 車体と動力ユニットは、動力ユニットのダイキャストフレームにある固定用の出っ張り(下の画像の丸で囲った部分にある)を引っ掛ける形で固定されています。

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なので動力ユニットと車体を分離する際には、車体側を軽く広げて動力ユニットを下に引っ張るとスポッと抜けて分解することができます。この際の注意点は、以下の3点です。

 

  • 一度も分解したことがない場合、かなりがっちりと固定されているため慎重に作業を進めること。何回か分解しているとボディ側も慣れてきて大した抵抗なく着脱できるようになります。
  • 主に車体の広げにくさの観点から、キャブ(運転室)側から動力ユニットを引き抜くとやりやすい。
  • 動力ユニットを引き抜く際、車両によってはモーターへの給電用の金属板が床板に引っかかることがあるため、力づくでの分解は厳禁

 

車体そのものはプラスチック製ということもあり、思っているよりは撓ってくれるため手すりの破壊等にだけ気をつければ意外と耐えてくれます。ただし不慣れなうちはくれぐれも無理は禁物です。

 

 

 

・清掃方法の一例

 

 先の記述では車体と動力ユニットの分離方法を書きました。しかし車両の構造によっては完全に分解しない方が車輪清掃が楽なパターンもありますので、実践的な内容として2種類のタイプ別に清掃方法を記載したいと思います。なおどちらの方法も『車輪を介さずに動力ユニットに直接電気を給電し、モーターの力で車輪を回すことで清掃液を含ませた綿棒を軽く当てるだけで車輪が磨かれる状態を目指す』という基礎理論は共通していますのでご安心ください。パワーパックは所持前提ですのでその点についてはご容赦を。

 

なお、お手軽に使えるお役立ちアイテムはこれです。画像のようにジョイントとコードの継ぎ目にマスキングテープを巻いて補強してやると、接続部での曲げの繰り返しで断線に至る事態を遠ざけることが出来ますのでおすすめですよ。

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※車輪清掃時の注意点について

 車体中央部の屋根に付いている警笛は、周りより頭一つ高い割にそれほど強度に優れているわけではないので、車輪清掃のためにひっくり返す際にはうっかり押しつぶしてしまわないように注意が必要です。

 この後の画像でも出てくるように、車両保管用のウレタンの車両が収まる部分を抜き出した後の廃材を利用して、キャブ直後と後部ラジエーター付近を支える形で橋渡しをするようにセットしてあげると不意の事故を防ぎやすいかと思います。

 

 

 

1. 燃料タンクカバーが簡単に外せるタイプ

 

 こちらは燃料タンクカバー(車体中央部の床下についているのっぺりした部品)が簡単に取り外せるタイプです。この記事ではES44ACを使って解説していきます。

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GE ES44AC このタイプは燃料タンクカバーだけを簡単に外せる

 例として出したES44ACのような、燃料タンクカバーが単独で分離できるタイプは(集電板の固定機構の関係で)分解後の組み立て時に集電板の収まり方にかなり注意をしないといけないため、構造をきちんと把握できるようになるまではこちらの方式の方が問題は起こりづらいかと思います。

 燃料タンクカバーは、下の画像で示したディテール兼固定用の爪で車体側に固定している構造となっています。なので本体側の爪が取り付いている部分を軽く押し込んで浮かせてやると、大した抵抗なく取り外すことができるようになっているわけですね。反対に取り付け時はこれらの爪がきちんと引っかかっているかを確認すればいいわけです。

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カバーを外したら動力ユニットのダイキャストが露出します。画像にも見えていますが、車体中央部で2つに分かれているのがおわかり頂けるでしょう。このダイキャストフレームは基本構造の話でも触れたように左右で電気的に独立しており、かつ集電板の役目も持っているため、このダイキャストに直接給電することでモーターを駆動することが出来ます。なので……

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ダイキャストフレームへの直接給電

このように、マスキングテープでターミナルジョイントを貼り付けてやれば線路に置かずともモーターを駆動することができるようになるというわけです。もちろん貼り付ける際は余裕を持って、うっかりショートさせてしまわないように注意してください。

 ここまでくれば、あとは普段模型を走らせる要領でパワーパックを操作することで車輪が回り出すので、清掃液を含ませた綿棒を軽く当ててやることで勝手に綿棒が汚れを拾ってくれるという流れです。

 なお、清掃終了後に燃料タンクカバーを戻す際には、カバーにも左右があるのでその点に注意して元通り組み立てましょう。基本的には鐘の造形がある部分が前方向(キャブ側)に対して左側、空気溜めの造形がある側が前方向に対して右側となっています。なんだかしっくり嵌まらないな……と思ったらその部分をまずはチェックしてみると良いですよ。

 

 

2. 燃料タンクカバーが簡単に外せないタイプ

 

 こちらは燃料タンクカバーが台枠下部構造と共にダイキャストフレームと一体化しているようなタイプの構成であるものが該当します。この記事ではSD70ACeを例に解説します。

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EMD SD70ACe このタイプは車体と動力ユニットを分解する方が清掃が簡単

 例として挙げたSD70ACeは、燃料タンクや台枠の一部が動力ユニット側に組み付けられている構造となっています。このような構造の場合は車体と動力ユニットを分離させずに給電できる場所を露出させる方が面倒なため、おとなしく分解してしまう方が結果的に楽で速いですね。

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分解した様子 ダイキャストフレームに台枠の一部や燃料タンクが組み付けられている

分解の手順は先に述べた通りです。特にモーターへの給電板が引っかかった状態で無理に引き抜かないように注意しましょう。

 動力ユニットと車体の分離に成功したら、次は給電用のターミナルジョイントのセットです。動力ユニットは基本縦長の形状なので、ジョイントでフレームを挟み込むような形でマスキングテープで固定してあげるのが安定しやすいかと思います。

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フレームの左右にペタリ、こちらももちろんショートには注意

この際マスキングテープを長めにとった場合は、フライホイールをマスキングテープで固定してしまわないように注意しましょう。

 あとは車輪が上を向くように動力ユニットをひっくり返して、ウレタン廃材を並べた台の上に乗せてやれば準備完了です。

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ウレタンの台の高さがケーブルを逃してくれます

 

 清掃が終わったら分解した部品の組み立てです。動力ユニットはダイキャストが斜めに切れている側がキャブ側になるので、前後逆に組み付けてしまわないよう注意してください(前後逆では途中で引っかかるとは思いますが……)。

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・最後に

 

 アメロコは重量ゆえに走行性能・牽引力共に非常に良好ですが、流石に車輪の清掃をしなければ走行量と共に走りは悪くなっていきます。

ですが整備の仕方さえ覚えてしまえば快適な走りを維持してくれますし、分解再組み立てができるようになればオイル切れなどにも自力で対処できるようになりますので、ぜひ自分なりの整備方法を確立して頂ければと思います。

 それでは手元の愛車が永く活躍してくれることを願いつつ、今回はここまでとさせていただきましょう。