鉄道趣味雑記帳

鉄道の旅と模型が好き

鉄道模型のはじめかた ~海の向こうへ手を伸ばそう~

鉄道模型の始め方、海外型編です。

 

 そもそも鉄道模型を手に取るのが初めてなんて人はこんな辺境までたどり着かないと思うので、鉄道模型のはじめかた ~入門編~ みたいな気の利いた記事はありません。ゆるして。

 まぁKATOとかTOMIXから出ている線路とパワーパックだけのスターターセットにお気に入りの車両でも探して買うのがいいと思います。ついでに掃除道具も揃えようね。

 

 というわけで本題へ。日本型の興味のあるところは一通り網羅したし、新しい世界の扉を開いてみたいなぁ……という人向けに、海外型鉄道模型の始め方の一例を紹介したいと思います。なお、この記事は海外型Nゲージを始めるという前提に立って書き進めていきます。NとHOの分岐についてはまた別の機会に。

ちなみに情報は2021年6月時点のものなので、いずれ記事中では発売予定になっていても既に発売済みになっている製品等も出てくると思いますのでご容赦を。ではだらだらと書き連ねていくので要点だけ把握したい人は適宜読み飛ばしてください。

結論だけ見たい人はこっち 

 

もくじ

 

 

 

 

・海外型鉄道模型ってぶっちゃけどうよ?

 

 こんな辺境までやってくる程度には興味もリサーチ力もある人であれば、既にかなり心が傾いていることでしょう。ただし海外型は海の向こう側が基準なわけで、当然日本型といろいろと勝手は違います。まずはそのあたりの基本的な知識を蓄えてみましょう。

 

1. 地域ごとの特徴と充実度

 

 ひとくくりに海外型と言っても、当然世界中に鉄道は存在しているわけです。エリア的には日本、アジア全域、アフリカ、ヨーロッパ、北アメリカ、中央・南アメリカ/オーストラリア、アフリカ、ぐらいに分けておくのがいいでしょうか。専門家じゃないのでわからん。

 この世界中の鉄道を模型的な視点で分類し直すと、日本、西ヨーロッパ、北アメリカ、その他、ぐらいのカテゴリに分かれます。分類の基準ですが、やはり(当然というか)先進国の方が実物視点でも模型商品視点でも圧倒的に充実していますので、その中でも特に鉄道の発達している地域とそれ以外全部に分類してしまうのが合理的というわけですね。各エリアの特徴を日本も含めてざっくり整理してみると、

 

・日本型鉄道模型

 ぼくらの祖国、電車キチガイの国。主流規格はNゲージ。N製品の充実度が価格の安さ・製品数どちらにおいても圧倒的な反面、HO製品は総じて金属製・少数生産がメインのため高価な傾向。

制御方式はほぼDC。

 

・欧州型鉄道模型

 鉄道発祥の地イギリスを擁する国際プロジェクト炎上に定評のある地域。こちらの主流規格はHOスケール(イギリス型はOOスケールが主流だが、線路幅は同じ16.5mmなので無問題)。そこまで詳しくない人でもメルクリンの名前ぐらいは耳にしたことがあるはず。HO製品はプラ製が主流で(日本型に比べれば)非常に安価。(専門外なので怪しいが)N製品もそこそこ出回っている印象を受けるが、日本型N製品に比べると総じて高級品な傾向。

制御方式はDCCが主流。

 

アメリカ型鉄道模型

 鉄道発祥の地がイギリスならば、もう一つの鉄道大国であり日本の鉄道の直系のご先祖様に当たるのがアメリカの鉄道。こちらも主流規格は欧州と同じくHOスケールで、多種多様で安価なプラ製品が出回っている。一方N製品はHOに反比例するように流通量も製品数も少ないが、値段は欧州型に比べるとまだ低め。

制御方式はDCCが主流。

 

・それ以外の地域の鉄道模型

 こちらはそもそも出回ってねぇ!!みたいな状態です。まぁ理由は色々あるんですが、鉄道趣味が許容されづらい程度には政情やら庶民のお財布やらが不安定、ぐらいにしておきましょう。

 ただし中国型や台湾型の一部については、N製品が最近日本にも入ってきています。……が、やはりメーカーの規模やら生産数やらが悪く作用しているのか値段はひっくり返りそうなぐらいお高いです。ちょっと前に出てた台湾型のDRC 1000とか20m級の3両で4万近くてひっくり返りそうになったわ!

HO製品になると存在しているのかすら不明。制御方式は(おそらく)DCが主流のはず……全くわからん。

 

2. スケール

 

 ある程度模型を齧ったことのある人ならば一度は耳にしたことがあるフレーズ「海外ではHOゲージが主流」、これはだいたい合ってます。”地域ごとの特徴と充実度”の項目でも述べましたが、欧米では鉄道模型の主流はHOスケールなので、日本型とはほぼ真逆と言っていいぐらいの充実度の差があります。

あくまで目安ですが、海外メーカー製N製品については同じ車両のHO製品とほぼ同等な値段というパターンが多いように感じます。私の親しんでいるアメリカ型であれば、貨車ならNとHOで値段はほぼ同じ。客車になると(基本的には)サイズの小さいNの方がそれなりに安くなるといった塩梅ですね。

 

3. 製品としての完成度

 

 HO製品もN製品も、外装の完成度については日本型に劣るということはありません。欧州型N製品に至っては、内装までメーカー出荷時点で凝っている物もあったりするので時として日本型を凌駕する完成度(と値段の高さ)であることもあります。

 一方、海外型と日本型で明確な差を感じることの多い部分というと、まず真っ先に殆どの人が走行性能を挙げるとかと思います。レンタルレイアウトに海外型車両を持ち込んだことのある人ならば嫌というほど思い知らされたことがあるでしょう。ただしこの点に関しては、海外型の走行性能が悪いというよりは日本型の走破性能が高すぎるんじゃないかなぁと思う次第です。日本型を前提としたレイアウトにおいては海外型がイレギュラーであるのも事実ですし。

 

・ここまでのまとめ

 主流規格の違いやそれに伴う各スケール製品の流通量にこそ差はあれど、海外型鉄道模型も日本型鉄道模型と根っこは同じ規格に基いたものなので、制御システムと線路幅さえ合致していれば問題なく走ってくれます。海外型鉄道模型に手を出すに当たっても日本型で運用していた設備はそのまま流用できるので、新規の設備投資が必要ということは基本的にありません。ここ大事。

 

 

では海外型鉄道模型の特徴を踏まえた上で……

 

・どこから/何から入るのがいいですか?

 

 適当に買って愛着が湧いたならそれでも全然構わないのですが、せっかくなら満足度が高くて興味も長続きするようなものがいいですよね。

 手を付けるルート自体は色々な選択肢がありますが、値段や入手の手間を含めて総合的に鑑みると、以下に提示する3つの選択肢のどれかをとっかかりにするのが丸いかなぁと思います。

 

  1. KATO・Nゲージの欧州型高速列車シリーズから
  2. KATO・Nゲージレーティッシュ鉄道シリーズから
  3. KATO・Nゲージのアメリカ型から

 

 ……別にKATOの回し者というわけではありませんが、日本国内で(日本型より少々値が張る程度の出費で)入手性が良いものとなるとKATOの海外型を推奨するのが丸いというのも現実なんですね。流石に日本型に比べるとラインナップは遥かに薄いとはいえ、国内メーカーで海外型をまともに生産しているのがKATOぐらいというのもありますが……

ともかく、KATO製海外型Nゲージをとっかかりにするメリットとして、

 

  • 足回りは安心と安定のKATO日本型準拠なので、海外製品にありがちな走行に関わるトラブルの発生率が非常に低い/トラブルに対しても日本型の扱いの知識がそのまま応用可能
  • (欧州型については)万が一部品の破損が発生しても、補修用部品が国内で出回っている
  • 値段も日本型よりやや高め程度で済み、(欧州型については)市中在庫も十分なので入手性が圧倒的に良い

 

 

この3点は海外メーカー製品では得難い強みです。やはり未知の世界に踏み込むに当たって、トラブルが発生したときに説明書が日本語で書いてある&日本語でメーカーのサポートを受けられるというのは安心感に繋がりますからね。

 それでは、先に挙げた3つのルートについてもう少し具体的に見てみましょう。

 

1. KATOの欧州型高速列車シリーズ

 

 ヨーロッパの鉄道に詳しくない人でも、ICEやTGVの名前ぐらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。新幹線に負けるなとばかりに生まれた欧州の高速鉄道網から、KATOはフランスのTGVをメインに製品化しています。直近ではイギリスからClass 800も製品化していましたね。それ以降では2021年6月に赤いTGVことタリス、2021年の9月にはICE4の新仕様も発売予定です。

 手に取る場合の強みについて、TGVとタリスやClass 800の場合は基本的にフル編成セットでの販売となっているため、後から増結だなんだと買い足す必要がないわかり易さでしょうか。

一方ICEとユーロスターについては、日本型新幹線でもおなじみの基本+増結セットでの販売となっています。こちらは10両フルセットが前提となるTGV系に対して、相対的な初期費用の安さが強みとなりますね。

 また、編成中間部が連接式のため連結器の扱いがやや特殊なTGV/タリスとユーロスターに対して、ICEはE3系等で採用されているKATOダイヤフラムカプラーを、Class 800は日本型在来線車両で広く採用されているボディマウントタイプのカプラーを採用しているため、日本型と殆ど変わらない感覚で扱えるのもICEとClass 800の強みと言えます。

 

詳細なラインナップはKATOのこちらのサイトをどうぞ、英語サイトなので面食らうかもしれませんが、載っているものは全て国内品番で発売されているため、気になる見た目の車両の名前をコピってキーワードとしてKATOを付加して検索してあげれば日本語の製品ページがヒットします。

www.kato-ice4.com

 

特に他意はありませんが、TGVやタリスの走行風景を収めた動画を見繕ってきました。

www.youtube.com

 

 

 

2. KATOのレーティッシュ鉄道シリーズ

 

 鉄道ファンなら一度ぐらいは耳にしたことがあるであろう氷河特急(私は氷河急行で覚えてしまっているのでそっちで呼んでしまいます)を運行するスイスの鉄道会社、レーティッシュ鉄道の車両群です。特に最近KATOが力を入れているジャンルなので、実際に販売されているところを目にした方も多いのではないでしょうか。

幸いなことに、こちらはKATOが日本語の特設サイトを用意してくれていますので、どんなシリーズなのかは実際にサイトを訪れてみて頂ければと思います。

 

www.kato-rhb.com

 

 手に取る場合、やはり圧倒的な手軽さが強みですね。実物が機関車/電車+客車の構成が主体ということもあり、機関車か電車が1両に客車が3両もあればそれだけで複数の編成を構築できる良い意味での雑多さは、模型的にも非常に面白くお財布にも優しいものとなっています。(電気機関車前後に客車が連なっているという、日本から見れば度肝を抜くような光景すらあります)

 気になる仕様について、カプラーこそ専用のものとなっていますが、モノとしては密着連結器と同じです。日本型電車の扱いに慣れている人なら特に困ることも無いでしょう。

注意点というほどではありませんが、執筆時点では(ほぼ市場在庫が捌けてしまっている)氷河特急は室内灯非対応です。一方のベルニナ急行系は室内灯対応となっています。

 

特に他意はありませんが、ベルニナ急行の走行風景を収めた動画も見繕ってきました。

www.youtube.com

 

 

 

3. アメリカ型(KATO USA製品)

 

 KATO USAブランドで展開されているアメリカ型車両群も、日本に入ってきています。最近では去年の秋頃発売になった20世紀特急などはポスターで見かけたよという人もいるかもしれません。上2つで紹介した欧州型と比較した場合、製品の種類は多いが入手性で劣るといった立ち位置です。

アメリカ型の場合は、良くも悪くも手軽さは両極端になりがちです。詳しく解説する前にざっくり纏めると

 

  • 連結器は日本型にも採用されているナックルカプラーと事実上同一なので、取り回しについては日本型車両と全く同じ
  • 客車にしろ貨物にしろ、基本はセットなのでそちらに手を出す場合は導入コストが嵩みがち
  • 一方で機関車1両だけを導入して、引かせる車両に既所持の日本型車両を割り当てる場合はローコストで楽しめる
  • ASSYパーツについては基本的に国内に出回っていないので注意が必要

 

となります。筆者が好むジャンルでもあるため、気になる人向けに詳しい解説を以下に載せておきます。細かいことはいいんだよって人は適当に読み飛ばしてください。

 

・全般的なラインナップについて

 機関車のバリエーションが非常に豊富です。一方で貨車についてはKATOが生産しているものはごく僅か。客車も基本は編成単位での販売が多く、1両単位で増やせて編成も組めるものというとシカゴメトラという通勤列車の車両程度となっています。

 

・導入コストについて

 機関車の場合はだいたい1両1~1.5万円ほどの範囲に収まるので、機関車を買うなら日本型蒸気機関車を買うぐらいの感覚で買えてしまいます。

 

 客車列車は、(一応は)1両単位での購入が可能なシカゴメトラや、3~4両セットが多いアムトラックのような現代車両についてはおよそ一両あたり3000~4000円程度で3~4両単位での導入が可能です。

一方で、先に紹介した20世紀特急のような10両近いセットで販売されている旅客列車黄金期のものになるとおよそ3万円前後となります。

ただし、これはあくまで客車のみの値段なので、牽引機も揃える場合は追加で機関車分の費用も計上しなくてはいけない点には注意しましょう。

 

 貨車については元より多くないラインナップの中で比較的容易に入手できるものとなると、コキのおばけ、セキのおばけ、クのおばけ、の3つに限られます。どれも迫力は十分ですが、単品での販売が存在しない関係で1セットあたりのお値段が1~1.7万とあまり気軽にとはいかないのが実情です。

 

・で、結局アメリカ型はどういうパターンがいいのよ?

 

 アメリカ型に興味があり、かつ既に出ている客車列車のセットが気になっていて多少出費が嵩んでもいいかなと思えるならば、必要なセットを買えばそれで揃う名列車のセットものを迷わず買っていいと思います。もちろん牽引機もお忘れなく。

 

 一方、まだそこまでガンギマリじゃないけどアメリカ型には興味があるんだよなという人は、とりあえず機関車を一両買ってみるパターンをおすすめします。関東在住の方であればホビーセンターカトーのアメリカ型コーナーを見に行って、気に入った塗装と見た目の機関車を探してみるのが手っ取り早いですね。あるいは動画で気に入った塗装と見た目の機関車が見つかれば、だいたいの機関車は分かりやすく会社のロゴが入っているのでそれを頼りに探してみてもいいでしょう。

 

 KATO製アメリカ型車両の強みとして、連結器は基本的にKATOナックルカプラー(自動開放対応のマグネマティックの方)が標準装備されている点が挙げられます。このカプラーは日本型に付いているナックルカプラーとほぼ同じものです。そして、ここで機関車を買うことの強みが出てきます。

つまり機関車に引かせる車両として、特別な改造や連結器交換が不要で(KATOカプラー/ナックルカプラーを装着している)既所持の日本型貨車や客車が使えることを意味するわけです。

そんなムチャクチャな、と思うかもしれませんが、これが意外といけますよ。コキやらタキやらの貨物を引かせてもいいですし、ブルトレ引っ張らせても案外さまになります。黒や青が配色のメインの機関車なら旧客でもそれっぽく見えてしまったり。

ただし二軸貨車については機関車の直後に連結すると、機関車側の連結器の復元性と貨車の重量の兼ね合いからか脱線を起こしやすいので注意してください。

 

特に他意は無いですが、アメリカの貨物列車+αの動画を見繕ってきました。

www.youtube.com

あぶれてしまったCSXという大手会社の列車の動画はこちらに

www.youtube.com

 

 

 

 ・制御方式ってどうすればいいの?

 

A. 日本型と同じDC制御でOK

(基本的に日本のお店で買う分には99%DC仕様なので特に気にしなくても大丈夫です)

 

 色々端折ると、ハマるかもわからない世界に足を踏み入れようとしているという前提に立てば、まずは既存インフラをそのまま使えるDC制御で遊ぶのがお財布的にも心理的なハードルの高さ的にも無難という話ですね。日本で遊ぶなら日本の仕様に合わせる方が色々と楽、とも。

まぁなんだ、「もできる」と「ねばならぬ」は=で結ばれる関係じゃないってことさ!

 もちろんずぶずぶと沼に沈んでいく仮定でどうしてもDCCでしかできないことをやってみたい!となればDCCに手を出すのはアリだと思います。(その場合はHOでやるのがいいんじゃないかなぁって気はしないでもないですが)

 

 

 というわけでぼちぼちクソ長記事を纏めて〆にしましょう。

 

・まとめ: 海外型鉄道模型のはじめかた

海外型鉄道模型の始め方の選択肢の一つとして筆者が提案するものは、 

 

 

 こんな感じですね。取っ掛かりに選ぶ車両は見た目が気に入ったとかその程度で大丈夫です、ハマれば知識は後から付いてきます。子供が初めて鉄道にハマる時のように、カッコいいからとかそんな理由で無問題

 ちなみにあくまで傾向として、ですが、旅客列車が好き/興味がある人は欧州型に、貨物列車が好き/興味があるという人はアメリカ型に触れてみるのが(将来的な派生も見越して)馴染みやすいかなぁと思います。もちろんあくまで目安です。筆者とかアムトラックを入り口にアメリカ貨物に沈み込んでいったクチですから……

 

兎にも角にも、願わくば模型をきっかけに世界の鉄道に興味と愛を注いで頂ければ嬉しい限りです。海外型を嗜む人が増えて国内で売れるようになれば入手性もマシになるかもしれないし!

 

 

 

・おまけ

 

おまけその1

 

アメリカ型機関車から海外型の世界に踏み込んだ人のために、アメロコの構造とメンテナンス法について簡単に説明した記事を仕立てましたので、整備のお供にどうぞ。

southwest-chief.hatenadiary.jp

 

おまけその2 

 

 ここまで目を通してくれた人のために、予算の目安だけ最後に放り投げておきます。実際の値段は店によって多少変動はしますが……

 

~1.5万

1.5~2.5万

2.5~3万

  • TGV、タリス(フル編成セット)

3~4万

5万以上ポンと用意できるならだいたいやりたい放題できるので、好きなものを買えばいいと思います。

 

 

 長々とお付き合いいただきありがとうございました。模型を通じてあなたの鉄道趣味の世界が広がらんことを……