鉄道趣味雑記帳

鉄道の旅と模型が好き

トラムウェイ製 60系客車の分解調整

 先日トラムウェイから再生産を待ち望んでいた60系客車が発売となりました。

スユニは一瞬で店頭から消えていった上に、オハユニやオハニ36も既に払底しかけているらしく売れていて喜ばしいやら生産量が足りてねぇと絶望するやらです。

 

 さて、このトラムウェイの60系ですが、どういうわけか異常な高確率(差の大小はあれどおそらくほぼ全ての製品)で車体中央部のボディが外側に膨らんでいるという持病を抱えています。

私はトラムウェイの車両を買うのは今回の60系が初めてでしたが、トラム製品伝統の持病だったりするんでしょうかね?

 

 とにかくこの厄介な仕様ですが、分解調整を施すことで完全に直すことができました。この結果を踏まえて、何が原因かも分析しつつ調整の手順を記していきます。

 

 先に述べておきますが、この持病は組立の粗さや一部の部品の調整の甘さが原因です。

設計・生産時の精度に組立時の工作の丁寧さが追いついていない、といった塩梅で先述の持病が発生している状態でした。

 

・注意点

この調整はメーカー側で想定していない部分まで分解します。特に破損を引き起こしやすい箇所は注記しますが、パーツ破損の可能性が常に付きまとうため自己責任の上で慎重に行ってください。

 

 

・分解

 車体と床下の分離は一般的なプラ製品と同じはめ込み式で、かつ割と緩めの組付けなので、車体裾を広げながら床板を持ち上げてあげればあっさりと分離します。

 ただし室内灯の導電システムが、集電板と室内灯ユニットがはんだ付けされたコードで直結されている構造なので、そのままでは車体と床板を完全に分離する事ができません。そのため一度室内灯を外す必要があります。

室内灯ははめ込みが中途半端な場合はあっさりと外れてくれますが(稀に最初から外れてしまっている場合があるらしい)、そうでない場合はツメで車体にはめ込まれているだけの屋根を一度外してしまってから室内灯を外す方が手っ取り早いでしょう。

 また、もしこの段階で車体側に歪みが発生しているようであれば、マスキングテープ等で車体を内側に少したわませた状態で保持して、しばらく放置することで歪みをある程度取った方が良いと思われます。

 

・チェックポイント1

 車体と床の分離ができたら、ボディ中央部の床板側のツメが引っかかる場所を確認してみましょう。

画像はオハニ61 これはゲート跡が無い当たり(?)の品、まぁ分解しますが

 購入直後の時点でボディ中央部が膨らんでいる場合、結構な高確率でこの部分の窓ガラスパーツにデカデカとゲートが残っています。ここにゲートが残っていると、床板側の固定用の爪と車体側のゲート残りが干渉して車体が外側に押されてしまうわけです。

 なお、ここには目立つゲート残りはないけれども持病は出ているという場合には後述の床板の反りだったり、あるいは他の部分で特大のゲートが窓ガラスパーツに残っていないかを見てみると良いでしょう。

 

・チェックポイント2

 このオハニは無事だったので写真を撮っていませんが、スユニやオハユニの場合は床板の荷物扉に干渉する部分の欠き取りの大きさが実際の荷物扉の位置と噛み合っていないために車体が押し広げられている場合があります。その場合は現物合わせで欠き取りを広げる作業が必要になるので注意です。

 

・チェックポイント3

床板を確認、中央部が線路側に反っている場合は修正が必要

 画像だとあまりうまく伝わりませんが、床板が線路側に反り返ってしまっていることがあります。このトラム製60系客車は元々の特性として車体側が床板の固定用ツメを抑える力が弱いため、ここで床板側が反り返ってしまっていると車体側で中央部の床板を保持できなくなってしまい、固定用のツメ同士がきちんと噛み合わないばかりか却って車体中央部の膨らみを生み出す原因になってしまっているパターンもあるわけです。

 そのため、この場合には床板にも調整を加える必要があります。

 

 

 ここまでのチェックポイントを踏まえて、確認するべきポイントと具体的な修正作業を纏めましょう。

 

  • 車体中央部の床板固定用突起の真上の窓ガラスパーツにゲートが残っている場合は、窓ガラスパーツのゲート残りを除去。
  • 郵便荷物・合造車の荷物扉と床板の欠き取りの位置や大きさが合っていない場合は、床板の欠き取りを広げて欠き取り部分に荷物扉が収まるように調整。
  • 床板が線路側に反り返っている場合、反りの解消。

 

ちなみにいずれにも該当しないけれど持病が出ている場合は、室内灯が半端にはめ込まれていて車体が歪んでいる可能性が濃厚です。

 では具体的な作業に入っていきます。

 

 

・窓ガラスのゲート取り

 確実に窓ガラスパーツのゲートを取るために、一度車体から窓ガラスを分離する必要があります。窓ガラスパーツは上下に貼られた両面テープで車体に固定されているため、一度これを剥がさなければいけないのですが、窓ガラスパーツの構造上区分けされた部分の境目で折れやすいので慎重な作業が必要となります。

持っているなら構造がシンプルで万が一のときも代車を用意しやすいオハ61で最初にやってみるのが無難かなというのが個人的な見解です。

窓ガラスパーツを慎重に持ち上げる。この段階では少し持ち上げるぐらいでOK

 窓ガラスを外すために、まず車体下側の両面テープを浮かせてしまいましょう。車体と窓ガラスの隙間に(車体を削らないように気をつけて)先曲がりピンセットなどを差し込み、テコの原理でほんの少しだけ持ち上げます、1~2mmほど持ち上げて少し保持すれば作業箇所の両面テープは剥がれるので、少しづつ場所をずらしていきましょう。目安は見て分かる程度に窓ガラスパーツが車体から浮いていて、指で隙間を広げられる塩梅です。

車体上側の両面テープを剥がす、焦らずに慎重に

 窓ガラスパーツの下側の両面テープが全て浮いたら、各部分の継ぎ目から「必ず隣り合う部分を両方同時に」慎重に少しづつ内側に倒して残った両面テープを剥がしていきます。

隣り合う部分を同時に倒していかないと、継ぎ目の部分で窓ガラスパーツが折れてしまいやすいのでこの手順は特に気をつけてください。隣との継ぎ目が折れない程度に少し強めに倒してそのまま保持すれば、両面テープは自然に剥がれていきます。

 片方の端を少し倒す→隣を同じ傾き具合で倒していく→反対側まで到達して全体が同じ傾き具合になったら最初に戻り、窓ガラスパーツが外れるまでこの手順を繰り返す、という流れです。

 

 窓ガラスパーツが無事外せたら、ゲートをきれいに除去して組み戻します。この時は出荷時状態と同じように両面テープでくっつけてもいいですし、ゴム系接着剤等で確実に接着してしまってもいいかもしれません。

 

 

・床板の反り修正

 床板の反りは幾つかの要素の状態で決まる上に、室内パーツと床板の分離の難易度が高いため非常に厄介なところでもあります。

 まず室内パーツと床板の分離ですが、これは両端を外してから中央部を外すという手順をおすすめします。両端の外し方は、例えば床板を手前側に、室内パーツを奥側にずらすように力を加え、自分の爪で床板側に付いている固定用のツメを弾いてまず片側の固定を外すような感覚です。この固定はかなり固いので床板側のツメを折ってしまわないように気をつけてください。

両端の固定を外したら、室内パーツを床板と水平方向に回転させるように力を加えながら同じ用に中央部の固定を外します。

 

 室内パーツと床板を分離できたら、まずは床板側にセットされているウェイトをチェックします。

ウェイトの反りを確認後、屋根側に反りが来るように曲げ具合を調整

 このウェイトの反り具合はまちまちですが、一旦取り外して屋根側に反りが来るように手で曲げて調整します。ウェイトは強度・性状的に床板全体に対してバネのような働きをするため、ウェイトを予め屋根側に反るように調整しておくことで組み付け後の床板中央部が垂れないように保持する役目を担ってもらうというわけです。

後述しますが、室内パーツ側が床板を線路側に押し下げるような力を加えてしまうので、これをウェイトの反発で抑え込むという理屈です。

 

 ウェイトの処理が終わったら、次は室内パーツ側の処理です。

赤丸部分のバリが気になる人は撤去する方が無難

こちらも裏側に結構バリが残っていたりしますので、気になる人は削り取っておくのが良いでしょう。

また、室内パーツも床板から取り外すと豪快に線路側に反りかえっている場合があります。その場合は屋根側に反るように曲げて反りを取りましょう(ただしウェイトのように見て分かるほど屋根側に反っている必要はなく、最悪ちょっと中央部が垂れてるかな?ぐらいでもウェイトの反発で抑え込めるので躍起になる必要はありません。)

 

・最終組立

 ウェイトの処理と室内パーツの反りの処理が終わったら、窓ガラスパーツのゲート取りを済ませた車体と再び組み付けます。

この時に出荷時点で取り付け済みの室内灯をそのまま使う場合は、天井部分に室内灯がきちんとはめ込まれているかも確認しましょう。

 

 うまく処理できていれば、下の画像のように車体中央部の膨らみが取れてスッキリとはまり込んでくれます。

窓ガラスのゲート取りや床板の反りの調整を終えて組み付けた状態
車体中央部で目立っていた膨らみが解消されている


 まるで塗装済み完成品キットのようだ、というぐらいには手のかかる製品でした。一番目立つ車体中央部の膨らみはこれで解消できますが、他にも室内灯が暗い、テールが構造上暗い上に導光レンズが妻面窓から丸見え、など好みに合わせて手を加えられる場所はいくつもありますね。

 

 とまぁトラムウェイの60系客車は悩ましいところは幾つもある製品なのですが、その一方で台車の転がりの良さだったり、残っていたゲート跡や意図せず発生していた反りなどを処理した後はすっきりと組み立てられたりと、基本設計は決して悪くない製品でもあります。

 広く出回っていて安く気軽に手に入る60系客車は現状トラムウェイのこの製品しかありませんので、旧客普通列車スキーで気になっている方はぜひ手にとってみてはいかがでしょう。在庫があるうちに・・・・・・